コラム06 相続税負担のため、会社の所有不動産の売却に追い込まれた

 相続税負担のため、会社の所有不動産の売却に追い込まれた

 美容関係製品の販売会社(株式非公開)であるC社のケースです。

 C社は創業30年の会社ですが、10年ほど前から急成長し、
 株の評価額も業績に連動して上昇していました。    

 社長が死亡する直前期には、株の相続税評価額は
 1株当たり約250万円になっていたのです。

 ところが、社長も、後継者である長男も、他の相続人も、
 このような自社株の評価に関する知識を持っていませんでした。

 これが悲劇の始まりでした。

 社長の死後、相続税を申告するときになって、
 多額の相続税が発生することがわかったのです。

 金銭での一括納付は不可能な状況で、
 物納や延納も事実上、困難な状況でした。

 結局、会社が所有していた不動産を売却することで現金を作り、
 それを会社が相続人に貸し付けることで相続税を納めたのです。
 

 このようなトラブルは、株式を公開していない会社で、
 かつ急成長して儲かっている会社に起こりがちなケースです。

 最悪の場合は、会社の存続すら危ぶまれる事態となります。

 しかし、それほど重大な問題にもかかわらず、
 株式公開をしていない中小企業の社長の中には、
 自社株の評価額や評価方法を知らない社長がたくさんいます。

 そんな社長さんたちには、
 ぜひ、自社株の評価方法や相続税について勉強し、
 株の生前贈与などの対策を講じておいてほしいと思います。


コラム05 兄弟で創業したが、社長の死後、社長になった弟に経営権なし

◆兄弟で創業したが、社長の死後、社長になった弟に経営権なし

 次は、機械部品メーカーのB社のケースです。

 B社は兄と弟が2人で起業した会社で、
 社長である兄が80%の株を保有し、
 専務である弟が20%の株を保有していました。

 数年前から社長が体調を崩したため、
 社業は弟の専務に任せることにしたのですが、
 自社株についてはそのままでした。

 その後、社長が亡くなり、社長が保有していた80%の株は、
 社長の妻と一人娘にそのまま引き継がれてしまったのです。

 このままでは会社の経営権を、
 社長の妻と娘に握られてしまうことになるため、

 社長の座を引き継いだ弟は、社長の妻と娘に
「株を全部売ってください」と申し出ました。

 しかし、応じてもらえませんでした。

 現在、B社の経営権は、社業に関わっていない社長の妻と娘に握られており、
 弟はいつ解任されるかわからない状況に戦々恐々としています。

 また、会社が第三者に売却されてしまう危険性もあるのです。

 このような状況を回避するためには、

 社長が生前に専務に株を贈与したり、遺言を作成して、
 専務への株の譲渡を検討しておくべきだったといえます。

 また、会社が自社株を買い取りできるように、
「相続人に対する売渡請求」が可能な旨を、
 定款に定めておくべきだったといえるでしょう。