コラム46 自社株はどのようにして発行するのか?

自社株はどのようにして発行するのか?

自社株の発行

ベースとなるのは定款

会社を設立する場合、会社の憲法といわれる定款を作成します。

定款は法的な効力がある書類で、公証人の認証を受ける必要があります。

変更をする場合には、株主総会の特別決議で3分の2以上の賛成を得なければなりません。

この定款には発行可能株式総数(発行限度)、事業内容、取締役、取締役会、監査役、株主総会、決算期等の最低限必要な事項や、会社に将来起こり得るトラブル防止に役立つ条件などを記載します。

株式発行時に決めるべき主な事項

非公開会社の株式の発行上限は、通常、実際に発行する株式数の4倍以上に設定します。

将来、新たに株式を発行する場合、効率的に実施できるようにするためです。

上限を超える場合には、株主総会の特別決議により上限を増やすことになります。

次に、資本金を決め、発行株式数を決めることになります。

資本金は1円でも設立可能ですが、以前施行されていた最低資本金制度に沿って1000万円にするケースが最も多く見られます。

たとえば、資本金1000万円で1株あたりの払込金額を500円とすると、発行株式数は2万株になります。

払込金額は自由に決めることができます。

資本金を増やす(増資)場合、当初の500円でなく、増資時点での高い株価で払込む(時価発行増資)こともあります。

資本金が決まると、資本金相当の現金を銀行に払込むことになりますが、ここで、誰がどんな割合で払込むか(出資割合)で株主構成が決定します。

社長一人で払込む場合は、持株比率は100%になります。

共同経営で複数で払込む場合は、社長の持株比率は最低でも過半数を確保する必要があります。

なぜなら、取締役を選んだり解任することは株主総会の普通決議の対象事項で、過半数の賛成により決定されるため、取締役の全員を選んだり解任することを自分一人で決めることができる(経営権)ようになるからです。

自社株を発行するときに決める主な事頂

総発行株式数(発行限度)

定款の中で総発行株式数(発行限度)を決める

資本金をいくらにするか決める

以前の最低資本金制度にならい、1,000万円が多い

1株あたりの払込金額を決める

払込単価は自由に決められる(例)

 
資本金…………………1,000万円
1株あたりの払込金額………500円
発行株式数……………20,000株

出資割合(払込みの割合)

株主構成が決まる

出資人数 出資者 払込金額 持株比率
1名 社長 1,000万円 100%
3名 社長 5,100千円 51%
A氏 3,000千円 30%
B氏 2,100千円 21%

 

 

 

 

経営権の確保

  • 取締役の選任・解任⇒株主総会の普通決議事項⇒過半数の賛成で可決
  • 社長が過半数の持株比率確保
  • 社長1人で、取締役全員を選ぶ(選任)辞めさせる(解任)ことができる

今回は押さえておきたい非公開会社が知っておくべき自社株の基礎知識として解説いたしました。自社株の発行は後々の展開まで踏まえた計画が重要です。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム45 会社の情報流出のリスク 重要事項を見られてしまう

会社の情報流出のリスク 重要事項を見られてしまう

大口販売先の株主から計算書類を見られたケ—ス

経営権や資金流出にもつながるきわめて重要なリスクが、会社の情報流出です。実際に起こり得るケースをお話ししましょう。

A社の先代社長と、大口取引先B社の先代社長とは親密な関係にあり、B社に持株の1%を持ってもらっていました。B社は、A社が契約通りの商品を納入していたため、決算書類も開示していませんでした。

その後、両社の社長に相続が発生し、それぞれ後継者が社長となりましたが、人的関係は希薄になっていきました。そんな中、B社は以前ほど儲からなくなり、A社に販売価格の引下げを要請することにしました。そこで、A社の決算内容を把握するため、決算書の開示を要請し、A社はやむなく情報開示に応じることになりました。

A社の決算内容を見たB社は、販売価格の引下げに問題ないと判断。交渉の結果、引下げの要求に成功しました。

親族に会計帳簿、取締役会議事録を見られたケース

C社の元社長は持株の過半数を保有しており、社長の兄弟は取締役として30%の持株を保有していました。社長の相続後、後継者が元社長の兄弟を追い出し、取締役のすべてを後継者の側近で固めました。

後継者は独善的に新規に大口先との取引を始めましたが、しばらくして先方が倒産し、会社は大きな損害を被りました。元社長の兄弟である株主は、後継者の経営責任の追及と損害賠償を目的として、株主代表訴訟を起こすことを決め、会計帳簿と取締役会議事録の閲覧請求を請求することになりました。

会計帳簿については、後継者の経営責任が確定的にならなくても、その可能性だけで請求が認められています。当初、会社は開示を拒絶しましたが、その拒絶理由を立証する義務があるため、最終的に会計帳簿の閲覧請求に応じ、さらに裁判所の決定により取締役会議事録の閲覧請求にも応じることになりました。

 

まとめ

取引先に計算書類を入手され、販売価格引下げになったケース

先代社長同士が親密な関係

代替わり後、両社の人的関係希薄

B社が決算書類の開示請求

B社がA社の決算内容把握

B社がA社に販売価格の引下げ要求

A社が販売価格引下げに応じる

 

 

親族から株主代表訴訟目的の閲覧請求に応じたケース

元社長と兄弟が取締役として共同経営

相続発生、後継者が取締役全員を側近で固める(元社長の兄弟を取締役から外す)

後継社長が独善的に大口新規先との取引開始

大口取引先が倒産し、多額の損失を被る

元社長の兄弟(30%の株主)が株主代表訴訟提起を決定

元社長の兄弟(30%の株主)が会計帳簿と取締役会議事録の閲覧請求

会計帳簿閲覧請求に応じる、拒否する場合、会社に立証責任ある

裁判所の決定により、取締役会議事録の閲覧請求に応じる

 


非公開会社が知っておくべき自社株問題として、会社情報流出リスクの重要事項を見られてしまうケースについてお話しました。問題が発生する前に自社の状況を把握し対策しておくことが大切です。疑問点があればお気軽にお問い合わせください。

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コラム44 自社株が分散し非協力的な問題株主が存在している

自社株が分散し非協力的な問題株主が存在している

買取請求をされると多額の資金が流出する

親族内の株主や、親族以外の株主の中に、非協力的な株主が存在している場合、会社にはさまざまなリスクがあります。

その一つが、反対株主の買取請求権を行使した株主から、税務上の株価を大きく上回る株価での買取を余儀なくされ、多額の資金流出につながるというリスクです。

反対株主の買取請求権の対象となるのは、「株式の買取請求権」「新株予約権の買取請求権」「新株予約権付社債の買取請求権」の3つです。

買取請求権を行使されると、会社は「公正な価格」で買取に応じる義務が発生し、価格が安い場合には裁判所に価格決定の申立てができますので、高値での買取を回避することはできません。

少数株主であっても、支配株主に適用されるDCF法(収益還元法)や時価純資産価額が適用されます。

買取請求権の行使が認められる反対株主の要件は、次の通りです。

  • 議決権が行使できる株主
    株主総会の前に反対通知を行うとともに、株主総会でも反対の議決権を行使すること。
  • 議決権を行使できない株主(無議決権株式、単元未満株式等)
    反対の意思表示をしなくても、無条件で買取請求権が認められている。
    なお、反対の対象となる事項はこちらです。
反対の対象となる事項
  1. 合併、会社分割、株式交換、株式移転の組織再編行為
  2. 事業譲渡、事業の全部譲受等
  3. 全部取得条項付種類株式の発行に係る定款変更(スクイーズアウト)
  4. すべての株式に譲渡制限(すべての株式に譲渡制限が付与されていない場合)を付与するための定款変更
  5. 譲渡制限、全部取得条項に関する種類株式を発行するの定款変更
  6. 種類株式を発行している会社において、種類株主総会の決議を要しない旨を定款に定めている場合の、株式併合、株式分割、単元株式数についての定款変更、株式・新株予約権の無償割当、株主割当の新株・新株予約券の募集

適法に決議していないと本来の目的達成が困難に

その他にも、法令や定款に基づき適法に決議されていない場合には、1株株主であっても、株主総会の取消訴訟や差止請求が可能となり、本来の目的を達することが困難になるというリスクもあります。

これらのリスクを回避するための対応策をまとめておきましたので参考にしてください。

リスクを回避するための対策
  1. いったん適法に買取請求権を行使されてしまうと、高値での買取に応じざるを得ないため、通常から会社経営に対して理解を深めてもらい、意思の疎通をよく図っておく
  2. 高齢の株主は、現時点で問題がなくても、相続により承継され問題株主になる可能性があるので、相続が発生する前に持株の買取を行う
  3. すでに問題株主となっている場合には、法的な手段による強制買取は極力避けて、タイミングを見ながらできる限り買取る努力を継続する
  4. 社員株主の場合は、持株会に持株を拠出してもらい、持株会の会員として規約に従って管理する
  5. グループ会社の場合、グループの持株会社の100%子会社に変更し、問題株主を持株会社の株主に置き換え、子会社間の組織再編を容易にする

自社株が分散し非協力的な問題株主が存在していると様々なリスクを抱えることになります。自社のリスクを事前に確認して把握しておくことが大切です。疑問点があればお気軽にお問い合わせください。

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コラム43 こんな会社は要注意!役員2人で50%ずつ株式を持っている

こんな会社は要注意!役員2人で50%ずつ株式を持っている

敵対関係になると何も決められなくなる

友人と2人で半分ずつお金を出し合って会社を設立した人たちからよく聞くのが、株式は平等に50%ずつ持っているという話です(兄弟もしくは親族で50%ずつ持っている場合も同じです)。

これは一見、平等で良いことのように思えるかもしれませんが、実はこのやり方には大きな落とし穴があることに、多くの人たちは気づいていません。

その落とし穴とは、2人の意見が対立し、敵対関係になったような場合、株主総会で決議する事項については、何も決められなくなってしまうということです。

たとえば、剰余金の処分や配当をどうするかという問題も、過半数の賛成、すなわち敵対している相手の賛成がなければ決められませんし、資本金の増額や定款の変更、会社の吸収合併といった問題も、敵対する相手の賛成がなければ決められなくなってしまうのです。

それならと、新株を発行して自分の持株比率を高めようとしても、新株発行の決議ができませんし、相手を辞めさせようにも、役員の解任決議もできません。

こうなると、重要なことが何も決められなくなり、会社の経営が行き詰まってしまいます。そこで、もはや会社を解散するしかないということになるわけですが、実は会社の解散も株主総会の決議事項なので、これも相手の賛同が得られなければ決められないという事態になってしまうのです。

敵対関係になる前に過半数を確保しておく

では、このような場合、どうすればいいのか?

敵対関係になる前に、相手の株式を買取るなり、増資するなりして、どちらかの持株比率が過半数になるようにしておくことです。

その前に敵対関係になってしまった場合は、裁判所に解散請求の訴えを起こし、裁判所に解散命令を出してもらって解散するしかありません。会社存続に問題があると判定された場合は、解散命令が出されることになります。

まとめ 役員が50%ずつ株式を持っているケース

社長50%・副社長50%ので株式を分配

関係が良好な場合は問題ないが、ひとたび関係がこじれると・・・何も決められなくなる

X剰余金の処分や配当について
X資本金の増額
X定款の変更
X会社の吸収合併
X新株発行
X役員の解任決議

その結果・・・

  • 会社の経営が行き詰まる
  • 会社を解散するしかない
  • 解散も独断では決められない
  • 裁判所に解散請求の訴えを起こす
  • 会社存続に問題があると判定された場合、裁判所が解散命令

 



こんな会社は要注意!いかがだったでしょうか?他にも要注意のケースがございますのでまたご紹介いたします。自社が要注意のケースに当てはまらないか等疑問点はお気軽にお問い合わせください。

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コラム42 名義株と疑われないための贈与時の注意点

名義株と疑われないための贈与時の注意点

贈与 プレゼント

方法を誤ると思わぬ相続税がかかるケースも

世の中には相続税対策として自分が持っている自社株を、贈与税がかからない範囲で毎年少しずつ後継者である長男に贈与している社長もたくさんいます。

しかし、贈与の仕方を間違えてしまうと、社長が亡くなったときに、税務署から「これまで長男に贈与されてきた株は名義株ではないか?」と疑われてしまうことになりかねないのです。

名義株とは、単に名義を貸しているだけで、実際には所有していない株のことです。この名義株に認定されてしまうと、それまで贈与で取得した株でも、贈与として認められなくなり、その分の株についても相続税を払わなければいけなくなってしまいます。

たとえば、社長が100%保有していた自社株を、非課税の範囲内で20年かけてトータルで50%贈与したとしても、名義株だと認定されれば、100%の株を相続したものとして、相続税が計算されることになってしまいます。

 

名義株と認定されないための具体策

では、名義株ではないことを証明するためには、どうすればいいのでしょうか?

最低限やっておくべきことは次の2つです。

1つ目は、贈与契約書を作成しておくことです。

贈与というのは、贈る人と贈られる人の双方の合意があって初めて成立するものです。したがって、これがないと疑われても仕方がないので、必ず作成しておきましょう。

2つ目は、取締役会で譲渡承認を得たことを、取締役会請事録に残しておくことです。

多くの会社は、自社株に譲渡制限をつけていて、取締役会等の承認を得なければ名義が変更できないことになっています。ですので、譲渡承認を得たという証明があれば、名義株だと疑われることもなくなるのです。

なお、きちんと贈与税を払って贈与した株については、名義株と疑われることはありません。

 

まとめ・名義株に認定されないためにやっておくべきこと

せっかく何年もかけて後継者に自社株を贈与したとても、名義株だと認定されれば、相続税の課税対象になってしまう 

■名義株に認定されないためには?

  1. 贈与契約書を作成しておく
  2. 取締役会で譲渡承認を得たことを議事録に残しておく

※贈与税を払っていれば、名義株と疑われることはない

■譲渡認証機関

  1. 取締役会設置会社→取締役会
  2. 取締役会非設置会社→株主総会 定款の変更により、代表取締役とすることも可能

今回のこちらのコラムは後継者が経営権を失わないための事業承継対策のひとつとしてご紹介いたしました。具体的な手続きの方法など豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム41 1株だけ残して経営権を維持

1株だけ残して経営権を維持する方法

後継者にバトンタッチ

1株だけ残し社長に過半数や3分の2の議決権付与

後継者に自社株を承継したいけれど、会社に対する経営権は維持しておきたいという社長には、1株だけ手元に残しておけば、残りをすべて後継者に移動しても、支配権を維持できる方法が2つあります。

1つ目は、1株を持つ社長に、過半数や3分の2の議決権を与えるという方法です。

株主は平等に権利を有するものですが、譲渡制限会社(非公開会社)の場合は「配当」「残余財産」「議決権」の3項目については平等でなくてもよいことになりました(属人的株式)。これによって社長の持株を1株残し、残りをすべて後継者に移動しても、議決権は過半数を維持する、または3分の2を維持するといった設計が可能になったのです。

これを行うには特殊決議といって、総株主の半数以上の賛成、かつ議決権の4分の3以上の賛成で定款を変更する必要がありますが、登記は不要です。


2つ目は、手元に残した1株を、拒否権付種類株式にする方法です。

拒否権は、株主総会決議事項と取締役会決議事項が対象で、すべての事項を対象にしてもいいですし、特定の項目だけを対象にすることもできます。ただし、あくまで拒否なので、自ら決めることはできません。

なお、普通株式を種類株式に転換するには株主全員の同意が必要で、定款の変更と登記もしなければなりません。ただし、第三者割当増資により、新たに発行する場合は、株主全員の同意は不要です。

拒否権付種類株式は、株式に権利が付与されたものなので、その株式が誰に持たれるかにより、大変なリスクを負うこともあります。

これに対して1つ目の方法は、株主に権利を付与する属人的なものなので、株主が死亡した場合は付与された権利も自動的に消滅することになります。したがって、事後のリスクはないので安心といえるでしょう。

 

1株だけを手元に残して後継者に承継する方法をまとめてみました

1.1株残し、社長に過半数や3分の2の議決権を与える

  • 譲渡制限会社(非公開会社)の場合は、「配当」「残余財産」「議決権」の3項目については平等でなくてもよい(属人的株主)
  • 社長の持株を1株だけ残し、過半数または3分の2の議決権を与えるといった設計が可能
  • 株主総会の特殊決議が必要(総株主の半数以上の賛成、かつ議決権の4分の3以上の賛成が必要)
  • この権利は属人的なものなので、株主が死亡した場合は付与された権利も自動的に消滅する
  • 定款を変更する必要があるが、登記は不要


2.手元に残した1株を拒否権付種類株式にする

  • 株主総会の決議事項と取締役会の決議事項に対して拒否権を発動ですることができるI
  • 種類株式に転換するには株主全員の同意が必要
  • 定款を変更し、登記する必要あり
  • ただし、第三者割当増資で新株を発行する場合は、株主全員の同意は不要
  • 拒否権付種類株式は株式に権利が付与されたものなので、その株式が誰の手に渡っても権利は引き継がれる

今回のこちらのコラムは後継者が経営権を失わないための事業承継対策のひとつとしてご紹介いたしました。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム40 従業員持株会の活用

従業員持株会の活用

持株会の活用 社員

相続によって自社株はどんどん分散していく

自社株が分散していくケースで最も多いのが、相続によるものです。社員株主に相続が発生すると、譲渡制限が付与されていても相続は譲渡に該当しないことから、会社の承認を得る必要がないため、相続財産として遺族(社外株主)に承継され、株主の名義書換もされてしまいます。したがって、そのままにしておくと永久に、相続によって自社株が顔の見えない社外の株主に分散していくことになるのです。


持株会の特徴

このような事態を回避するための方法としておすすめしたいのが、従業員持株会の活用です。従業員持株会は、民法667条の「民法上の組合」として設立するので、法人格がなく法人税の課税対象とならず、持株会の会員に直接課税(バススルー課税)がされます。

また、株主数は、持株会を一人の株主としてではなく、会員の人数を数えます。したがって、会員各自は非同族株主として、配当還元価額が適用されます。

保有株式は共有となり、会員は自社株を直接保有することなく、持分という形で間接的に保有します。株式の管理は理事長に委託され、株式名義は理事長名義となり、議決権行使も一括行使しますが、議決権の不統一行使(反対意見も反映させる)が認められています。議決権の行使は理事長が行うため、株主総会に出席できるのは理事長のみです。

持株会規約を承認して入会することで、会員が退会または死亡等により入会資格を失ったときは、自動的に退会扱いになります。退会時の精算は、持分をあらかじめ決められた株価で持株会が買取り、現金で支払います(資金が不足する場合、買取資金を会社が貸し付けます)。

株式の引き出しは認められておらず、持分を他人に譲渡したり、担保に供したりすることもできません。すでに保有している自社株を組み入れることができるので、社員株主の了解を得て、持株会に取り込むこともできます。

 

持株会社の特徴をまとめてみました

  1. 従業員持株会は、法人格がなく法人税の課税対象とならず、持株会の会員に直接課税(パススルー課税)される。
  2. 株主数は、持株会を一人の株主としてではなく、会員の人数を株主と数える。
  3. 会員各自は非同族株主として、配当還元価額が適用される。
  4. 保有株式は共有となり、会員は自社株を直接保有することなく、持分という形で間接的に保有する。
  5. 株式の管理は理事長に委託され、株式名義は理事長名義となり、議決権行使も一括行使する。ただし、議決権の不統一行使(反対意見も反映させる)が認められている。
  6. 株主総会に出席できるのは理事長のみ。
  7. 会員が退会または死亡等により、入会資格を失ったときは、自動的に退会する。
  8. 退会時の精算は、持分をあらかじめ決められた株価で持株会が買取り、現金で支払う(資金が不足する場合、買取資金を会社が貸し付ける)。
  9. 株式の引き出しは認められていない。
  10. 持分を他人に譲渡したり、担保に供したりすることはできない。
  11. すでに保有している自社株を組入れることができる。

 


相続の際に慌てないためにも、自社株の分散を防ぐ方法はあらかじめ考えておく必要があります。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム39 事前に後継者に自社株を移動しておく

事前に後継者に自社株を移動しておく

生前贈与

自社株の承継のタイミングは早いほうがよい

後継者に自社株を承継する方法としては、3通りあります。

  1. 相続時に移転
  2. 生前に贈与
  3. 生前に譲渡

後継者に経営権を承継するには、自社株のほとんどを後継者に集中する必要があるため、極めて不平等な財産分割にならざるを得ません。その結果、他の相続人の不満は大きく、トラブルの可能性が高くなります。

そこで、生前に後継者へ自社株を移動しておくことで、その分相続時の自社株が減少し、トラブルリスクの減少につながります。

遺言がない場合には法定相続となり、後継者への自社株集中が困難になるため、遺言は必須事項です。しかし、遺留分の問題は残ります。また、相続の場合には、その時点での株価評価になり、想定外の相続税負担となるリスクがあります。

生前に贈与する場合には、非課税程度の範囲、または株価評価が低い時点で贈与すれば贈与税負担は減少し、3年経過すれば、税務上の相続財産からも外れます。また、遺言での遺留分算定の対象は、原則、相続前10年間の贈与に限定されたので、早期に贈与すると遺留分侵害額が減少することになります。

生前に譲渡する場合には、株価の低い時期に後継者個人または後継者が支配権を有する会社に売却します。この場合には、自社株が売却代金という現金資産に置き換わり、売却株式は遺留分の対象外となります。

財産の分割方法は親(社長)が決めることが大切

子供が複数いる場合には、子供同士で分割方法を決めるのは困難なので、親が事前に決めることが相続時のトラブル防止の観点から大切になります。生前での後継者への自社株移動も、社長主導で実行しましょう。また、遺留分対策として自社株以外の資産を増やし、後継者以外の相続人に分割できる資産を準備することも重要です。

 

社長がやるべきこと

【 生前に後継者に自社株を移動し、残った株は遺言で集中を図る 】

  • トラブルリスクの低減
  • 10年経過により、遺留分侵害額の減少
  • 低い株価での自社株移動が可能→資金負担の軽減

POINT!遺産分割、生前での自社株移動は社長自身が決めること


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コラム38 相続から3年10カ月以内の特例

相続から3年10カ月以内の特例

相続 株式

3年10カ月以内に売却すれば譲渡所得になる

自社株を自社に売却した場合、譲渡所得と配当所得に分解して課税額を計算するのが原則です。
しかし、相続で取得した自社株を、自社に自己株式として売却する場合には、税務上の特例があり、全額譲渡所得として扱われることになっています。
ただし、この特例を受けるためには、相続から3年10カ月以内に自社に売却する必要があります。

特例を受ける場合の3つの注意点

この特例を受ける場合の注意点は次の通りです。

1.取得価額

相続で取得した自社株の取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぎます。したがって、創業社長から相続した株式の評価が1株5万円だったとしても、取得価額は当初の出資金額の500円となり、売却益が発生します。
売却益は5万円ー500円=4万9500円です。

2.譲渡経費

自社株を承継するときに負担した相続税は、譲渡経費として売却益から差し引くことができます。
仮に、相続税率が20%とした場合、5万円x20%=1万円が経費となりますので、売却益は4万9500円ー1万円=3万9500円となります。

3.譲渡所得税

譲渡所得税は分離課税で一律20.315%ですので、課税額は3万9500円x20.315%=8024円です。
配当所得の税率が最高で約50%なのに比べると、約30%の節税になりますので、この特例の節税効果は大きいといえるでしょう。
ただし、自社株を自社に売却する場合、自己株式には議決権がありませんので、持株比率が低下することになります。
したがって、持株比率が50%前後の場合は、後継者が経営権を有する関係会社に売却することをおすすめします。


 

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コラム37 遺留分侵害額請求で想定外の資金流出

遺留分侵害額請求で想定外の資金が流出してしまう

column37 遺留分 侵害額請求

社長の相続財産に占める自社株の割合が圧倒的に多いため、自社株を株価が安いうちに生前贈与し、残った自社株を後継者に集中させるために遺言を作成するのは一般的によくあることです。

遺留分の財産

遺留分とは、直系尊属のみが相続人である場合を除き、相続人が法定相続分の1/2を相続する権利で、社長の兄弟は権利がありません。

遺留分を算定する場合相続時点での財産だけで遺産分割をすると不平等な分割になるので、相続前10年間に生前贈与した財産額も追加した上で、遺留分の金額を算定します。

そして、遺言により承継する財産額が遺留分より少ない相続人は、多額の財産を承継した相続人に不足分を現金で支払うよう請求ができます。

生前贈与した株価の財産評価

問題は、生前贈与した財産の評価で、安い株価で贈与した自社株を、贈与時ではなく、相続時の高い株価で評価する必要があることです。

適用する株価は、相続財産と同じ株価からそれよりも一段と高い時価評価までありますが、相続人全員が納得すれば、最も安い、相続財産と同じ株価が適用できます。

しかし、もめた場合には、それより一段と高い時価評価になってしまいます。

もともと財産に占める自社株割合が圧倒的に高いのに加え、生前贈与の株価が相続時の財産評価よりもさらに高い時価で評価されると、想定外の多額の遺留分侵害額を請求されることになります。

後継者は現金で支払う必要があるため、持株を自社等に売却する等して現金を確保することにより、会社から想定外の資金が流出するリスクがあります。

ですから、遺言作成を含めた、事前の対策が必須なのです。

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