コラム29 遺言について事前に子供の了解を得る


遺留分に注意

コラム18にて「自社株をすべて後継者に相続させるという遺言を作っておくことが大事だ」と書きましたが、実はそれだけでは後継者に自社株を100%相続させることができないことがあります。
理由は、「遺留分」があるからです。
これは相続人の権利を守るためのもので、「すべての財産を長男に譲る」と遺言で書いても、相続人には法定相続分の2分の1の権利があり、遺言よりも優先されると法律で定められています(ただし、被相続人の兄弟には権利がありません)。
したがって、たとえばオーナー社長が亡くなり、相続人が配偶者と長男と次男の3人で、相続財産がほぼ自社株だけだった場合、遺言に「長男にすべての自社株を相続させる」と書いておいたとしても、配偶者には4分の1、次男には8分の1の遺留分があるので、遺留分侵害額の請求をされると、長男はその分(2人合わせて8分の3)のお金を払わなければならないのです。

親は後継者以外の子供に言い含めておく必要あり

さらに、遺留分の算定をする場合、過去10年間に贈与されたものも対象になり、その評価額は贈与時ではなく、相続時の時価で算定されることになります。
ですので、株価が安いときに後継者に贈与しても、相続時の時価が高くなっていると、それが相続財産に上乗せされ、遺留分の金額も増えることになります。
そうなると、後継者は相続税に加え、遺留分を払うための資金を調達するために、自社株を換金せざるを得なくなるので、多額の会社の資金が流出してしまいます。
したがって、オーナー社長は遺言に加え、あらかじめ子供たちの了解を得て、遺留分侵害額の請求をしないように、自社株以外の資産を増やすなどの対策を講じましょう。
持株会社への持株売却や、生前退職金(社長を辞める必要あり)の支給は現金資産を増やすのにも有効な方法です。

遺言があっても、事前の了解がない場合は遺留分に注意

「すべての財産を長男に譲る」という遺言があっても、「遺留分」は「遺言」に優先する

例:遺族が配偶者、長男 (後継者)、 次男の場合

配偶者の遺留分は4分の1、次男の遺留分は8分の1

遺留分侵害額の請求

長男はその分(2人合わせて8分の3)のお金を払うのか?

会社が買取りをする場合は、会社の資金が流出する


遺留分の算定は、
●過去10年間に贈与されたもの(特別受益) も対象になる
●評価額は贈与時ではなく相続時の時価で算定

株価が安いときに後継者に贈与しても、相続時の時価が高いと、それが相続財産に上乗せされ、遺留分の金額も増えることになる

後継者は遺留分を払うための資金を調達するために、自社株を換金したりするので、会社の資金が流出

オーナー社長は遺言に加え、遺留分侵害額の請求をしないように説得しておくことが必要!

 

※平成30年の民法改正のポイント

  1. 遺留分減殺請求権→遺留分侵害額請求権になり、現物から原則金銭での支払いに変更された
  2. 金銭の代わりに資産(自社株等)を渡した場合、譲渡したものとされ、売却益か生じた場合、譲渡所得税を余計に負担することになる
  3. 遺留分算定基礎財産の計算上、 過去に贈与されたものは、相続前10年間に限止された(遺留分を侵害することを知って行った贈与は年数制限なし)

 

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