・個人に売るか会社に売るかで株価が変わる
生前に後継者に自社株を譲渡する場合、後継者個人に譲渡するか、後継者が支配権を有する会社に譲渡するかによって、株価が変わります。
後継者個人に譲渡する場合に適用されるのは相続税法上の株価で、後継者が支配する会社に譲渡する場合は法人税法上の株価が適用されます。
相続税法上の株価と法人税制上の株価を比較した場合、相続税法上の株価のほうが安くなる傾向がありますので、後継者個人に譲渡したほうが安く売却できることになります。
しかし、後継者に資金負担能力がない場合は、後継者が支配権を有する会社を作り、そこの売却することで個人の負担を軽減することができます。
・譲渡には5つのメリットがある
一方、オーナー社長から見た場合は、後継者個人に譲渡するより、後継者の会社に譲渡したほうが、株価が高いのでお金がたくさん入ってくることになります。
逆にお金はそれほど必要ない場合は、株価が安いので、後継者個人に譲渡したほうがいいといえます。
いずれに譲渡するにせよ、譲渡には次の5つのメリットがあります。
- 生前退職金代わりにまとまったお金が入り、社長も続けられる(退職金を取るためには社長を退任する必要あり)
- 自社株が現金資産に替わるので、遺産分割が容易になる
- 売却代金を将来の相続税の納税資金に充当できる
- 将来、株の評価が上昇しても、現金資産の評価は確定している
- 売却は原則として遺留分算定の対象外となる
売却代金で不動産を取得すれば、相続財産の評価は50%ほど低下します。また、社長の持株を1株だけ残し、残りすべてを譲渡しても経営権を確保できる方法もあります。
譲渡先別の株価の違い
後継者個人に譲渡 | 相続税法上の株価を適用 | 安い |
後継者が支配権を 有する会社に譲渡 |
法人税法上の株価を適用 | 高い |
社長の資金需要から見た売り先の決め方
お金が必要な場合 | 後継者が支配権を有する会社に譲渡 |
お金はそれほど必要ない場合 | 後継者個人に譲渡 |