コラム45 会社の情報流出のリスク 重要事項を見られてしまう

会社の情報流出のリスク 重要事項を見られてしまう

大口販売先の株主から計算書類を見られたケ—ス

経営権や資金流出にもつながるきわめて重要なリスクが、会社の情報流出です。実際に起こり得るケースをお話ししましょう。

A社の先代社長と、大口取引先B社の先代社長とは親密な関係にあり、B社に持株の1%を持ってもらっていました。B社は、A社が契約通りの商品を納入していたため、決算書類も開示していませんでした。

その後、両社の社長に相続が発生し、それぞれ後継者が社長となりましたが、人的関係は希薄になっていきました。そんな中、B社は以前ほど儲からなくなり、A社に販売価格の引下げを要請することにしました。そこで、A社の決算内容を把握するため、決算書の開示を要請し、A社はやむなく情報開示に応じることになりました。

A社の決算内容を見たB社は、販売価格の引下げに問題ないと判断。交渉の結果、引下げの要求に成功しました。

親族に会計帳簿、取締役会議事録を見られたケース

C社の元社長は持株の過半数を保有しており、社長の兄弟は取締役として30%の持株を保有していました。社長の相続後、後継者が元社長の兄弟を追い出し、取締役のすべてを後継者の側近で固めました。

後継者は独善的に新規に大口先との取引を始めましたが、しばらくして先方が倒産し、会社は大きな損害を被りました。元社長の兄弟である株主は、後継者の経営責任の追及と損害賠償を目的として、株主代表訴訟を起こすことを決め、会計帳簿と取締役会議事録の閲覧請求を請求することになりました。

会計帳簿については、後継者の経営責任が確定的にならなくても、その可能性だけで請求が認められています。当初、会社は開示を拒絶しましたが、その拒絶理由を立証する義務があるため、最終的に会計帳簿の閲覧請求に応じ、さらに裁判所の決定により取締役会議事録の閲覧請求にも応じることになりました。

 

まとめ

取引先に計算書類を入手され、販売価格引下げになったケース

先代社長同士が親密な関係

代替わり後、両社の人的関係希薄

B社が決算書類の開示請求

B社がA社の決算内容把握

B社がA社に販売価格の引下げ要求

A社が販売価格引下げに応じる

 

 

親族から株主代表訴訟目的の閲覧請求に応じたケース

元社長と兄弟が取締役として共同経営

相続発生、後継者が取締役全員を側近で固める(元社長の兄弟を取締役から外す)

後継社長が独善的に大口新規先との取引開始

大口取引先が倒産し、多額の損失を被る

元社長の兄弟(30%の株主)が株主代表訴訟提起を決定

元社長の兄弟(30%の株主)が会計帳簿と取締役会議事録の閲覧請求

会計帳簿閲覧請求に応じる、拒否する場合、会社に立証責任ある

裁判所の決定により、取締役会議事録の閲覧請求に応じる

 


非公開会社が知っておくべき自社株問題として、会社情報流出リスクの重要事項を見られてしまうケースについてお話しました。問題が発生する前に自社の状況を把握し対策しておくことが大切です。疑問点があればお気軽にお問い合わせください。

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