コラム34 種類株式は9種類ある

種類株式は9種類ある

権利の内容が異なる株式を発行できる

株主の権利内容は皆同じと思っている人も多いと思いますが、実は定款で定めることによって、一定の事項について優先的もしくは劣後的な取り扱いを受ける株式を発行してもよいことになっています。

このような株式を「種類株式」といい、現在9つの種類株式の発行が認められています(下記「異なる種類の株式」参照)。

この種類株式をうまく活用することによって、事業承継にまつわるトラブルを未然に回避することができるのです。

種類株式を活用すればトラブル回避も可能

その1つが議決権制限株式です。これは株主総会の決議事項の全部または一部に対して議決権のない株式のことです。たとえば後継者以外の親族や役員、社員の株式を無議決権株式にすることによって、後継者の議決権割合を高めることができます。

2つ目が取得条項付株式です。これは、あらかじめ定めた一定の事由が生じた場合に、あらかじめ定めた価格または評価方法で、会社が強制的に買取ることができる株式です。

たとえば、役員を退任したり社員が退職したりしたときには強制買取ができるようにしておくことで、買戻しや買取価格で生ずるトラブルを解消し、もめることなく株式の社外流出を防ぐことができます。

3つ目が拒否権付株式(黄金株)です。これは、一定の事項について特定の株主に拒否権を付与する株式で、この株主が同意しない限り、その事項については決定することができないようにした株式です。

たとえば、株主総会または取締役会の決議事項について拒否権を有する株式を社長が保有することによって、過半数の株を承継した後継者が株主権を乱用することに歯止めをかけることができます。ただし、あくまで拒否だけであり、自ら決定することはできません。

このように、種類株式を活用することで、自社株を巡るトラブルを防ぐことができます。

異なる種類の株式

定款により下記の内容の異なる定めをした2種以上の種類株式を発行できる
(ただし、④⑤⑥は全株式を各条件の株式にすることができる)。

①剰余金の配当(会社法108条1項1号)
一部の株式が配当優先株式、配当普通株式、配当劣後株式となる。

②残余財産の分配(会社法108条1項2号)
一部の株式が残余財産について優先株式、普通株式、劣後株式となる。

③株主総会において議決権を行使できる事項(会社法108条1項3号)
一部の株式が議決権制限株式となる。

④譲渡による当該種類株式の株式の取得について当該株式会社の承認を得ること(会社法108条1項4号)
一部の株式が譲渡制限株式となる。

⑤株主が当該発行会社に対して取得を強制的に請求できること(会社法108条1項5号)
一部の株式が取得請求権付株式となる。

⑥発行会社が一定の事由が生じたことを条件とし、あらかじめ定められた価格で強制的に取得できる(会社法108条1項6号)
一部の株式が取得条項付株式となる。

⑦発行会社が株主総会の特別決議により全部の当該株式を取得できる(会社法108条1項7号)
一部の株式が全部取得条項付種類株式となる。

⑧株主総会において決議すべき事項のうち当該種類株主による種類株主総会の決議があること(会社法108条1項8号)
株主総会の決議に対する種類株主の拒否権、買収防衛策における黄金株。

⑨種類株主総会において取締役•監査役の選任権を有する(会社法108条1項9号)
役員選任権付種類株式で非公開会社のみが発行できる。


今回は種類株式についてご紹介いたしました。どの株式の選択が最適であるかなど、ご不明点がございましたら、まずは下記フォームからお問い合わせください。

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