コラム42 名義株と疑われないための贈与時の注意点

名義株と疑われないための贈与時の注意点

贈与 プレゼント

方法を誤ると思わぬ相続税がかかるケースも

世の中には相続税対策として自分が持っている自社株を、贈与税がかからない範囲で毎年少しずつ後継者である長男に贈与している社長もたくさんいます。

しかし、贈与の仕方を間違えてしまうと、社長が亡くなったときに、税務署から「これまで長男に贈与されてきた株は名義株ではないか?」と疑われてしまうことになりかねないのです。

名義株とは、単に名義を貸しているだけで、実際には所有していない株のことです。この名義株に認定されてしまうと、それまで贈与で取得した株でも、贈与として認められなくなり、その分の株についても相続税を払わなければいけなくなってしまいます。

たとえば、社長が100%保有していた自社株を、非課税の範囲内で20年かけてトータルで50%贈与したとしても、名義株だと認定されれば、100%の株を相続したものとして、相続税が計算されることになってしまいます。

 

名義株と認定されないための具体策

では、名義株ではないことを証明するためには、どうすればいいのでしょうか?

最低限やっておくべきことは次の2つです。

1つ目は、贈与契約書を作成しておくことです。

贈与というのは、贈る人と贈られる人の双方の合意があって初めて成立するものです。したがって、これがないと疑われても仕方がないので、必ず作成しておきましょう。

2つ目は、取締役会で譲渡承認を得たことを、取締役会請事録に残しておくことです。

多くの会社は、自社株に譲渡制限をつけていて、取締役会等の承認を得なければ名義が変更できないことになっています。ですので、譲渡承認を得たという証明があれば、名義株だと疑われることもなくなるのです。

なお、きちんと贈与税を払って贈与した株については、名義株と疑われることはありません。

 

まとめ・名義株に認定されないためにやっておくべきこと

せっかく何年もかけて後継者に自社株を贈与したとても、名義株だと認定されれば、相続税の課税対象になってしまう 

■名義株に認定されないためには?

  1. 贈与契約書を作成しておく
  2. 取締役会で譲渡承認を得たことを議事録に残しておく

※贈与税を払っていれば、名義株と疑われることはない

■譲渡認証機関

  1. 取締役会設置会社→取締役会
  2. 取締役会非設置会社→株主総会 定款の変更により、代表取締役とすることも可能

今回のこちらのコラムは後継者が経営権を失わないための事業承継対策のひとつとしてご紹介いたしました。具体的な手続きの方法など豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム41 1株だけ残して経営権を維持

1株だけ残して経営権を維持する方法

後継者にバトンタッチ

1株だけ残し社長に過半数や3分の2の議決権付与

後継者に自社株を承継したいけれど、会社に対する経営権は維持しておきたいという社長には、1株だけ手元に残しておけば、残りをすべて後継者に移動しても、支配権を維持できる方法が2つあります。

1つ目は、1株を持つ社長に、過半数や3分の2の議決権を与えるという方法です。

株主は平等に権利を有するものですが、譲渡制限会社(非公開会社)の場合は「配当」「残余財産」「議決権」の3項目については平等でなくてもよいことになりました(属人的株式)。これによって社長の持株を1株残し、残りをすべて後継者に移動しても、議決権は過半数を維持する、または3分の2を維持するといった設計が可能になったのです。

これを行うには特殊決議といって、総株主の半数以上の賛成、かつ議決権の4分の3以上の賛成で定款を変更する必要がありますが、登記は不要です。


2つ目は、手元に残した1株を、拒否権付種類株式にする方法です。

拒否権は、株主総会決議事項と取締役会決議事項が対象で、すべての事項を対象にしてもいいですし、特定の項目だけを対象にすることもできます。ただし、あくまで拒否なので、自ら決めることはできません。

なお、普通株式を種類株式に転換するには株主全員の同意が必要で、定款の変更と登記もしなければなりません。ただし、第三者割当増資により、新たに発行する場合は、株主全員の同意は不要です。

拒否権付種類株式は、株式に権利が付与されたものなので、その株式が誰に持たれるかにより、大変なリスクを負うこともあります。

これに対して1つ目の方法は、株主に権利を付与する属人的なものなので、株主が死亡した場合は付与された権利も自動的に消滅することになります。したがって、事後のリスクはないので安心といえるでしょう。

 

1株だけを手元に残して後継者に承継する方法をまとめてみました

1.1株残し、社長に過半数や3分の2の議決権を与える

  • 譲渡制限会社(非公開会社)の場合は、「配当」「残余財産」「議決権」の3項目については平等でなくてもよい(属人的株主)
  • 社長の持株を1株だけ残し、過半数または3分の2の議決権を与えるといった設計が可能
  • 株主総会の特殊決議が必要(総株主の半数以上の賛成、かつ議決権の4分の3以上の賛成が必要)
  • この権利は属人的なものなので、株主が死亡した場合は付与された権利も自動的に消滅する
  • 定款を変更する必要があるが、登記は不要


2.手元に残した1株を拒否権付種類株式にする

  • 株主総会の決議事項と取締役会の決議事項に対して拒否権を発動ですることができるI
  • 種類株式に転換するには株主全員の同意が必要
  • 定款を変更し、登記する必要あり
  • ただし、第三者割当増資で新株を発行する場合は、株主全員の同意は不要
  • 拒否権付種類株式は株式に権利が付与されたものなので、その株式が誰の手に渡っても権利は引き継がれる

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コラム40 従業員持株会の活用

従業員持株会の活用

持株会の活用 社員

相続によって自社株はどんどん分散していく

自社株が分散していくケースで最も多いのが、相続によるものです。社員株主に相続が発生すると、譲渡制限が付与されていても相続は譲渡に該当しないことから、会社の承認を得る必要がないため、相続財産として遺族(社外株主)に承継され、株主の名義書換もされてしまいます。したがって、そのままにしておくと永久に、相続によって自社株が顔の見えない社外の株主に分散していくことになるのです。


持株会の特徴

このような事態を回避するための方法としておすすめしたいのが、従業員持株会の活用です。従業員持株会は、民法667条の「民法上の組合」として設立するので、法人格がなく法人税の課税対象とならず、持株会の会員に直接課税(バススルー課税)がされます。

また、株主数は、持株会を一人の株主としてではなく、会員の人数を数えます。したがって、会員各自は非同族株主として、配当還元価額が適用されます。

保有株式は共有となり、会員は自社株を直接保有することなく、持分という形で間接的に保有します。株式の管理は理事長に委託され、株式名義は理事長名義となり、議決権行使も一括行使しますが、議決権の不統一行使(反対意見も反映させる)が認められています。議決権の行使は理事長が行うため、株主総会に出席できるのは理事長のみです。

持株会規約を承認して入会することで、会員が退会または死亡等により入会資格を失ったときは、自動的に退会扱いになります。退会時の精算は、持分をあらかじめ決められた株価で持株会が買取り、現金で支払います(資金が不足する場合、買取資金を会社が貸し付けます)。

株式の引き出しは認められておらず、持分を他人に譲渡したり、担保に供したりすることもできません。すでに保有している自社株を組み入れることができるので、社員株主の了解を得て、持株会に取り込むこともできます。

 

持株会社の特徴をまとめてみました

  1. 従業員持株会は、法人格がなく法人税の課税対象とならず、持株会の会員に直接課税(パススルー課税)される。
  2. 株主数は、持株会を一人の株主としてではなく、会員の人数を株主と数える。
  3. 会員各自は非同族株主として、配当還元価額が適用される。
  4. 保有株式は共有となり、会員は自社株を直接保有することなく、持分という形で間接的に保有する。
  5. 株式の管理は理事長に委託され、株式名義は理事長名義となり、議決権行使も一括行使する。ただし、議決権の不統一行使(反対意見も反映させる)が認められている。
  6. 株主総会に出席できるのは理事長のみ。
  7. 会員が退会または死亡等により、入会資格を失ったときは、自動的に退会する。
  8. 退会時の精算は、持分をあらかじめ決められた株価で持株会が買取り、現金で支払う(資金が不足する場合、買取資金を会社が貸し付ける)。
  9. 株式の引き出しは認められていない。
  10. 持分を他人に譲渡したり、担保に供したりすることはできない。
  11. すでに保有している自社株を組入れることができる。

 


相続の際に慌てないためにも、自社株の分散を防ぐ方法はあらかじめ考えておく必要があります。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム39 事前に後継者に自社株を移動しておく

事前に後継者に自社株を移動しておく

生前贈与

自社株の承継のタイミングは早いほうがよい

後継者に自社株を承継する方法としては、3通りあります。

  1. 相続時に移転
  2. 生前に贈与
  3. 生前に譲渡

後継者に経営権を承継するには、自社株のほとんどを後継者に集中する必要があるため、極めて不平等な財産分割にならざるを得ません。その結果、他の相続人の不満は大きく、トラブルの可能性が高くなります。

そこで、生前に後継者へ自社株を移動しておくことで、その分相続時の自社株が減少し、トラブルリスクの減少につながります。

遺言がない場合には法定相続となり、後継者への自社株集中が困難になるため、遺言は必須事項です。しかし、遺留分の問題は残ります。また、相続の場合には、その時点での株価評価になり、想定外の相続税負担となるリスクがあります。

生前に贈与する場合には、非課税程度の範囲、または株価評価が低い時点で贈与すれば贈与税負担は減少し、3年経過すれば、税務上の相続財産からも外れます。また、遺言での遺留分算定の対象は、原則、相続前10年間の贈与に限定されたので、早期に贈与すると遺留分侵害額が減少することになります。

生前に譲渡する場合には、株価の低い時期に後継者個人または後継者が支配権を有する会社に売却します。この場合には、自社株が売却代金という現金資産に置き換わり、売却株式は遺留分の対象外となります。

財産の分割方法は親(社長)が決めることが大切

子供が複数いる場合には、子供同士で分割方法を決めるのは困難なので、親が事前に決めることが相続時のトラブル防止の観点から大切になります。生前での後継者への自社株移動も、社長主導で実行しましょう。また、遺留分対策として自社株以外の資産を増やし、後継者以外の相続人に分割できる資産を準備することも重要です。

 

社長がやるべきこと

【 生前に後継者に自社株を移動し、残った株は遺言で集中を図る 】

  • トラブルリスクの低減
  • 10年経過により、遺留分侵害額の減少
  • 低い株価での自社株移動が可能→資金負担の軽減

POINT!遺産分割、生前での自社株移動は社長自身が決めること


自社株継承に関しては知らないと損してしまうケースが多くあります。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム38 相続から3年10カ月以内の特例

相続から3年10カ月以内の特例

相続 株式

3年10カ月以内に売却すれば譲渡所得になる

自社株を自社に売却した場合、譲渡所得と配当所得に分解して課税額を計算するのが原則です。
しかし、相続で取得した自社株を、自社に自己株式として売却する場合には、税務上の特例があり、全額譲渡所得として扱われることになっています。
ただし、この特例を受けるためには、相続から3年10カ月以内に自社に売却する必要があります。

特例を受ける場合の3つの注意点

この特例を受ける場合の注意点は次の通りです。

1.取得価額

相続で取得した自社株の取得価額は、被相続人の取得価額を引き継ぎます。したがって、創業社長から相続した株式の評価が1株5万円だったとしても、取得価額は当初の出資金額の500円となり、売却益が発生します。
売却益は5万円ー500円=4万9500円です。

2.譲渡経費

自社株を承継するときに負担した相続税は、譲渡経費として売却益から差し引くことができます。
仮に、相続税率が20%とした場合、5万円x20%=1万円が経費となりますので、売却益は4万9500円ー1万円=3万9500円となります。

3.譲渡所得税

譲渡所得税は分離課税で一律20.315%ですので、課税額は3万9500円x20.315%=8024円です。
配当所得の税率が最高で約50%なのに比べると、約30%の節税になりますので、この特例の節税効果は大きいといえるでしょう。
ただし、自社株を自社に売却する場合、自己株式には議決権がありませんので、持株比率が低下することになります。
したがって、持株比率が50%前後の場合は、後継者が経営権を有する関係会社に売却することをおすすめします。


 

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コラム37 遺留分侵害額請求で想定外の資金流出

遺留分侵害額請求で想定外の資金が流出してしまう

column37 遺留分 侵害額請求

社長の相続財産に占める自社株の割合が圧倒的に多いため、自社株を株価が安いうちに生前贈与し、残った自社株を後継者に集中させるために遺言を作成するのは一般的によくあることです。

遺留分の財産

遺留分とは、直系尊属のみが相続人である場合を除き、相続人が法定相続分の1/2を相続する権利で、社長の兄弟は権利がありません。

遺留分を算定する場合相続時点での財産だけで遺産分割をすると不平等な分割になるので、相続前10年間に生前贈与した財産額も追加した上で、遺留分の金額を算定します。

そして、遺言により承継する財産額が遺留分より少ない相続人は、多額の財産を承継した相続人に不足分を現金で支払うよう請求ができます。

生前贈与した株価の財産評価

問題は、生前贈与した財産の評価で、安い株価で贈与した自社株を、贈与時ではなく、相続時の高い株価で評価する必要があることです。

適用する株価は、相続財産と同じ株価からそれよりも一段と高い時価評価までありますが、相続人全員が納得すれば、最も安い、相続財産と同じ株価が適用できます。

しかし、もめた場合には、それより一段と高い時価評価になってしまいます。

もともと財産に占める自社株割合が圧倒的に高いのに加え、生前贈与の株価が相続時の財産評価よりもさらに高い時価で評価されると、想定外の多額の遺留分侵害額を請求されることになります。

後継者は現金で支払う必要があるため、持株を自社等に売却する等して現金を確保することにより、会社から想定外の資金が流出するリスクがあります。

ですから、遺言作成を含めた、事前の対策が必須なのです。

遺言書の作成には様々なケースが想定されます。豊富な経験から御社に最適なご提案をいたします。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム36 持ち株会社の活用で経営を効率化する

持ち株会社の活用で経営を効率化する

重要事項は原則、社長が一人で決められない

社長の自社株保有率が51%で、残りの49%をその他の株主が保有しているような場合、普通決議の項目は社長が一人で決められますが、特別決議や特殊決議が必要な重要事項については社長が一人で決めることはできません

したがって、このままの状態では、重要事項を決める場合、他の株主に協力してもらわなければいけないため、どうしても経営効率が悪くなってしまいます。そこで、この状態をなんとか解消したいと考える社長が多いのですが、思いつくのは他の株主から株を買取ることくらいです。

しかし、実は株を買取らなくても、社長が一人で決められるようにする方法があります。それは、持株会社を活用することです。

持株会社に株式移転すれば経営効率もアップ

具体的には、現在の会社(A社)の株式すべてを株式移転し、新たに持株会社を設立して、その100%子会社になります。

すると、持株会社の株式の保有比率は今と変わらず、社長が51%、その他の株主が49%のままなので、その他の株主は持株会社の経営には口出しできても、子会社のA社の経営には口出しできなくなります。

その結果、社長は実質的にA社の経営について一人でなんでも決められるようになり、経営効率が格段に良くなるというわけです。

たとえば、A社が臨時株主総会を開催しなくても、株主が提案し、株主全員が承認すれば、開催したことになります。A社の株主は持株会社1社だけなので、社長が提案し、社長が承認すれば開催したことになるのです(書面決議OK)。

さらに、この状態にすることで、その他の株主は裁判所の許可が必要になるので、A社の経営情報を勝手に見ることができなくなるため、情報の流出防止にもなります。

前回に引き続きは持株会社の活用方法をご紹介いたしました。ご不明点がございましたら、まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム35 持株会社の活用で経営権を安定させる

持株会社の活用で経営権を安定させる

自社株が相続対象になっている限り分散する

社長の存命中に後継者に自社株を移転したり、遺言で後継者に自社株の大半を承継することに成功したとしても、実はそれで安心というわけにはいきません。

なぜなら、次の代への相続時に、自社株が分散してしまう可能性があるからです。

つまり、自社株が相続の対象となっている限り、自社株分散の問題は永遠に続いていくわけです。したがって、この問題を根本的に解決するには、社長の自社株を相続対象から切り離すしかありません。そうすれば、自社株の分散を防止することができるのです。

持株会社に移動すれば分散問題は解決する

では、具体的にどうすれば、自社株を相続財産から切り離すことができるのか?
それは、社長の持株を持株会社に移動することです。持株会社は解散しない限り相続はありません。

移動の方法には、「株式移転・株式交換」と「譲渡」があります。

株式移転・株式交換は、すべての株主に持株を100%取得させて持株会社の100%子会社とする代わりに、親会社の株式を取得するという方法です。


なお、株式移転は本体の株主構成がそのまま移転するのに対し、株式交換は既存の株主構成に、本体の株主構成が一定の交換比率によって組み合わされます。さらに、一定の条件により非課税で、かつ資金負担なしに移動することができます。

一方、譲渡の場合は、持株は売却代金に置き換わり、売却益がある場合は譲渡所得税20.315%がかかることになります。その代わり、持株会社の株主構成は自由に設計でき、後継者や孫(未成年者も0k)を株主とし、間接的に自社株の承継をすることができます。


いずれの方法でも、将来持株会社において持株が分散した場合、次の後継者の持株が過半数を維持できていれば、本体の経営権には影響がありません。

 

自社株を相続財産から切り離す事例


今回は持株会社の活用方法をご紹介いたしました。他には持ち株会社の活用で経営を効率化する方法などもあります。ご不明点がございましたら、まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム34 種類株式は9種類ある

種類株式は9種類ある

権利の内容が異なる株式を発行できる

株主の権利内容は皆同じと思っている人も多いと思いますが、実は定款で定めることによって、一定の事項について優先的もしくは劣後的な取り扱いを受ける株式を発行してもよいことになっています。

このような株式を「種類株式」といい、現在9つの種類株式の発行が認められています(下記「異なる種類の株式」参照)。

この種類株式をうまく活用することによって、事業承継にまつわるトラブルを未然に回避することができるのです。

種類株式を活用すればトラブル回避も可能

その1つが議決権制限株式です。これは株主総会の決議事項の全部または一部に対して議決権のない株式のことです。たとえば後継者以外の親族や役員、社員の株式を無議決権株式にすることによって、後継者の議決権割合を高めることができます。

2つ目が取得条項付株式です。これは、あらかじめ定めた一定の事由が生じた場合に、あらかじめ定めた価格または評価方法で、会社が強制的に買取ることができる株式です。

たとえば、役員を退任したり社員が退職したりしたときには強制買取ができるようにしておくことで、買戻しや買取価格で生ずるトラブルを解消し、もめることなく株式の社外流出を防ぐことができます。

3つ目が拒否権付株式(黄金株)です。これは、一定の事項について特定の株主に拒否権を付与する株式で、この株主が同意しない限り、その事項については決定することができないようにした株式です。

たとえば、株主総会または取締役会の決議事項について拒否権を有する株式を社長が保有することによって、過半数の株を承継した後継者が株主権を乱用することに歯止めをかけることができます。ただし、あくまで拒否だけであり、自ら決定することはできません。

このように、種類株式を活用することで、自社株を巡るトラブルを防ぐことができます。

異なる種類の株式

定款により下記の内容の異なる定めをした2種以上の種類株式を発行できる
(ただし、④⑤⑥は全株式を各条件の株式にすることができる)。

①剰余金の配当(会社法108条1項1号)
一部の株式が配当優先株式、配当普通株式、配当劣後株式となる。

②残余財産の分配(会社法108条1項2号)
一部の株式が残余財産について優先株式、普通株式、劣後株式となる。

③株主総会において議決権を行使できる事項(会社法108条1項3号)
一部の株式が議決権制限株式となる。

④譲渡による当該種類株式の株式の取得について当該株式会社の承認を得ること(会社法108条1項4号)
一部の株式が譲渡制限株式となる。

⑤株主が当該発行会社に対して取得を強制的に請求できること(会社法108条1項5号)
一部の株式が取得請求権付株式となる。

⑥発行会社が一定の事由が生じたことを条件とし、あらかじめ定められた価格で強制的に取得できる(会社法108条1項6号)
一部の株式が取得条項付株式となる。

⑦発行会社が株主総会の特別決議により全部の当該株式を取得できる(会社法108条1項7号)
一部の株式が全部取得条項付種類株式となる。

⑧株主総会において決議すべき事項のうち当該種類株主による種類株主総会の決議があること(会社法108条1項8号)
株主総会の決議に対する種類株主の拒否権、買収防衛策における黄金株。

⑨種類株主総会において取締役•監査役の選任権を有する(会社法108条1項9号)
役員選任権付種類株式で非公開会社のみが発行できる。


今回は種類株式についてご紹介いたしました。どの株式の選択が最適であるかなど、ご不明点がございましたら、まずは下記フォームからお問い合わせください。

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コラム33 納税猶予制度のメリット・デメリット

知ってトクする相続税・贈与税の納税猶予制度があります。

一番のメリットは納税資金負担がゼロになること

相続税・贈与税の納税猶予制度には一長一短があります。そこで、あらためてこの制度のメリットとデメリットをまとめておきたいと思います。

まずメリットですが、主に次の4つでしょう。

  1. 要件を満たせば、事業承継に伴って発生した贈与税・相続税の全額が猶予されるため、事業承継時の後継者の納税資金負担が事実上ゼロになる
  2. M&A等による株式譲渡や合併による消滅、解散等によって納税猶予が取り消された場合でも、納税の減免措置がある
  3. 贈与税の納税猶予については、相続時精算課税制度との併用が可能。併用することで、納税猶予が取り消された場合でも、納税額の負担が軽減されること。具体的には、暦年課税によって計算される贈与税額ではなく、相続時精算課税制度による特別控除2500万円を超える金額に対して税率20%で計算された贈与税額の納付となる。
  4. 特例制度の適用期間が2027年まで続くため、今から準備を始めても問に合う可能性が高い(後継者の要件となる役員就任期間は3年以上)。ただし、後継者の経営力の育成については後継者の能力による。

一方、デメリットとしては、主に次の2つが考えらます。

  1. オーナーは贈与時までに社長を退任する必要があるため、経営に口出しできなくなる
  2. 納税猶予の取消しが行われると、利子税を払わなければならなくなる

制度の利用について十分な検討が必要なケース

オーナーが社長を辞めたくない場合や、オーナーが自社株を現金化したいと考えている場合、後継者の経営力に不安がある場合、後継者不在で早い段階でのM &Aを検討している場合、株式が分散し同族関係者で議決権の過半数を保有していない場合などは、この制度の利用について十分な検討が必要でしょう。


 

まとめ

納税猶予制度のメリット

  1. 事業承継時の後継者の納税資金負担が事実上ゼロになる
  2. 納税猶予が取り消された場合でも、納税の減免措置がある
  3. 相続時精算課税制度との併用が可能であり、併用することで、納税猶予が取り消された場合でも、納税額の負担が軽減される
  4. 特例制度の適用期間が2027年まで続くため、今から準備を始めても間に合う可能性が高い

納税猶予制度のデメリット

  1. オーナーは贈与時までに社長を退任する必要がある
  2. 取消しが行われると、利子税を払う必要が生じる

制度利用について十分な検討が必要なケース

  • オーナーが社長を辞めたくない場合
  • オーナーが自社株の多くを現金化したいと考えている場合
  • 後継者の経営力に不安がある場合
  • 後継者不在で早い段階でのM&Aを検討している場合
  • 株式が分散し同族関係者で議決権の過半数を保有していない場合

今回は納税猶予制度についてご紹介いたしました。この制度を理由するための事前対策やしてはいけないことなど、他にもポイントがいくつかあります。まずは下記フォームからお問い合わせください。

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