コラム44 自社株が分散し非協力的な問題株主が存在している

自社株が分散し非協力的な問題株主が存在している

買取請求をされると多額の資金が流出する

親族内の株主や、親族以外の株主の中に、非協力的な株主が存在している場合、会社にはさまざまなリスクがあります。

その一つが、反対株主の買取請求権を行使した株主から、税務上の株価を大きく上回る株価での買取を余儀なくされ、多額の資金流出につながるというリスクです。

反対株主の買取請求権の対象となるのは、「株式の買取請求権」「新株予約権の買取請求権」「新株予約権付社債の買取請求権」の3つです。

買取請求権を行使されると、会社は「公正な価格」で買取に応じる義務が発生し、価格が安い場合には裁判所に価格決定の申立てができますので、高値での買取を回避することはできません。

少数株主であっても、支配株主に適用されるDCF法(収益還元法)や時価純資産価額が適用されます。

買取請求権の行使が認められる反対株主の要件は、次の通りです。

  • 議決権が行使できる株主
    株主総会の前に反対通知を行うとともに、株主総会でも反対の議決権を行使すること。
  • 議決権を行使できない株主(無議決権株式、単元未満株式等)
    反対の意思表示をしなくても、無条件で買取請求権が認められている。
    なお、反対の対象となる事項はこちらです。
反対の対象となる事項
  1. 合併、会社分割、株式交換、株式移転の組織再編行為
  2. 事業譲渡、事業の全部譲受等
  3. 全部取得条項付種類株式の発行に係る定款変更(スクイーズアウト)
  4. すべての株式に譲渡制限(すべての株式に譲渡制限が付与されていない場合)を付与するための定款変更
  5. 譲渡制限、全部取得条項に関する種類株式を発行するの定款変更
  6. 種類株式を発行している会社において、種類株主総会の決議を要しない旨を定款に定めている場合の、株式併合、株式分割、単元株式数についての定款変更、株式・新株予約権の無償割当、株主割当の新株・新株予約券の募集

適法に決議していないと本来の目的達成が困難に

その他にも、法令や定款に基づき適法に決議されていない場合には、1株株主であっても、株主総会の取消訴訟や差止請求が可能となり、本来の目的を達することが困難になるというリスクもあります。

これらのリスクを回避するための対応策をまとめておきましたので参考にしてください。

リスクを回避するための対策
  1. いったん適法に買取請求権を行使されてしまうと、高値での買取に応じざるを得ないため、通常から会社経営に対して理解を深めてもらい、意思の疎通をよく図っておく
  2. 高齢の株主は、現時点で問題がなくても、相続により承継され問題株主になる可能性があるので、相続が発生する前に持株の買取を行う
  3. すでに問題株主となっている場合には、法的な手段による強制買取は極力避けて、タイミングを見ながらできる限り買取る努力を継続する
  4. 社員株主の場合は、持株会に持株を拠出してもらい、持株会の会員として規約に従って管理する
  5. グループ会社の場合、グループの持株会社の100%子会社に変更し、問題株主を持株会社の株主に置き換え、子会社間の組織再編を容易にする

自社株が分散し非協力的な問題株主が存在していると様々なリスクを抱えることになります。自社のリスクを事前に確認して把握しておくことが大切です。疑問点があればお気軽にお問い合わせください。

事業継承、自社株について不安なことがありましたら、ぜひ資本戦略研究所にお任せください。

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